2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により大き な被害を受けた三陸沿岸地域では、震災から 3 年以上が経過した現在、いくつかの集落でインターネットを活用した水産物の販売経路の拡大、漁業体験ツアーの開催等、漁村復興に向けた活動が進められている。
一方で、三陸沿岸の漁業集落の多くは震災以前から漁業経営の悪化や従事者の高齢化等、地域の存続に関わる課題を抱えていた。漁村復興に向けた活動の規模、手法、進捗状況は、震災以前の漁業実態によっても異なってきていると 考えられる。
本研究では、震災被害からの漁業復旧にとどまらない、 インターネットを活用した水産物の販売経路の拡大、漁業体験ツアーの開催といった、漁業及び漁村を震災以前 よりも良い状況にする為の復興を目指した活動を「漁業復旧にとどまらない漁村復興に向けた活動」と設定する。漁村復興に関する既往研究では、過去の三陸沿岸を襲った津波被害からの漁村復興の歴史について分析をおこなった研究や行政の漁業集落復興計画等の分析をおこなった論考等によって、集落ごとに多種多様な特徴を持つ三陸沿岸部における、集落それぞれの地域性を重視した復興の重要性が明 らかにされている。また個々の漁業集落における事例研究も多くなされている。一方で、 漁業集落における震災以前の実態、被災・復旧状況、復興に向けた活動について広域的かつ相対的に分析をおこなっている研究は未だ少ない状況にある。
そこで本研究では、三陸沿岸の被災漁村を対象とし、震災以前の漁業実態、被災・復旧状況、復興に向けた活動の動向を分析し、漁業復旧にとどまらない漁村復興に関しての基礎的知見を得ることを目的とする。