南海トラフ巨大地震に備えた事前復興の取組みと課題 -和歌山県由良町衣奈地区での活動を通して-
東日本大震災から 5 年が経過した。この震災を機に日本国内の企業や行政機関では業務再開を迅速に行うための BCP(Business Continuity Plan)・BCM(Business Continuity Management)といった取組みが注目を集めている。しかし、活動の継続が問われるのは企業や行政機関だけではなく、地域も同様である。
近年、日本では少子高齢化・人口減少に伴う地域の持続性が危惧されている。大規模災害により被災した場合は、新潟県中越地震や東日本大震災による被災地域と同様に、人口減少と高齢化が加速される恐れがある。そのため、京都大学防災研究所では南海トラフ巨大地震が予想される地域で「災害に見舞われる前に」地域の「営み」を継続させるための計画、すなわち、「事前復興計画」の策定に取り組んでいる。本稿では、事前復興計画策定のモデル地区として和歌山県由良町衣奈を選定した経緯を紹介した上で、住民参加型のワークショップ開催を通した事前復興計画策定への取組みと課題について考察する。