南海トラフ巨大地震の津波被災想定地域における「事前復興」の取組実態と課題
本研究は、極めて高い切迫性で発生が予測される南海トラフ巨大地震の津波被災想定地域(5県9市町)を対象に、事前復興の観点で公共公益施設や住宅等の浸水被害を低減する対策検討事例の実態調査を実施し、先行的取組から実施上の課題や工夫を俯瞰して抽出することで、今後各地で展開される安全な地域への移転事業計画に示唆を与えることを目的とする。
政策実施担当者等へのインタビュー調査から、(1)公助主体で実施可能な公共公益施設の高台移転事業は、施設の老朽化や人口減少も背景に順次実施されているが、地域合意を要する面的な住宅の移転や土地利用規制の取組は実現に至っていないこと、(2)高台移転を検討する地域では、道路事業や農地整備事業など地域で動いている他事業との連動により、住宅更新期を迎えた移転希望者や域外移住者、次世代のための安全な高台を創出する取組が検討されていること等を明らかにした。