震災前からの高台展開を目指して-美波町由岐湾内地区の事前復興まちづくり-
徳島県美波町由岐湾内地区は、徳島県の南東部に位置する、海と山に囲まれた風光明媚な漁村である。古くから水産業が非常に盛んな町であったが、近年の漁獲量の減少や魚価の低迷等により後継者は減る一方で、かつての賑わいは“今は昔”という状況である。また、過去の南海地震によって、破壊と再生を繰り返してきた町でもある。美波町東由岐地区にある康暦の碑は、1361年の正平南海地震による被害者の供養碑と伝えられており、現存する日本最古の津波碑といわれている。
事前復興まちづくりとは、南海トラフ巨大地震・津波等の自然災害リスクや、人口減少・過疎化・高齢化等の社会リスクを受け止め、震災前から復興を含めた町の将来像を共有し、復興対策や地域活性化に取り組むことである。我々の解釈では、復興準備という意味での事前復興は、災害が起きたとしても人口や町の成長を維持することを目標としているのに対し、事前復興まちづくりは、まちづくりの視点から、災害が起こる前から地域の持続性や豊かさ、住民の幸福度を向上させることを目標としている。我々は、この事前復興まちづくりによって、地震・津波による被害を最小限にとどめ、震災前過疎をくい止め、生業やコミュニティの絆を守り、震災が発生しても地域の消滅を防ぐことができると信じている。
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