平成7年の阪神・淡路大震災以降、地震や防災に関する研究が見直される中で、東京では首都直下の地震の切迫性が指摘されすでに10年余が経過している。さらに平成23年3月の東日本大震災は巨大津波による未曾有の被害を出現させた。これほどの震災になると、元の生活への復旧は困難であり、数年、場合によってはそれ以上の時間と労力をかけて復興に取り組んでいくことが必要になる。
この復興については、阪神・淡路大震災までは社会的にはほとんど備えがない状況が続いていた。準備なしでいきなり復興を進めると混乱を招くことは明らかである。一方、劣悪な環境下で生活を送る被災者をそのままにして、時間をかけてゆっくり進める復興もありえない。円滑にかつみんなの思いが盛り込んだ復興を進めるには、災害前、すなわちふだんから準備しておかねばならない。
本研究会は、このような観点から、「事前復興対策」のあり方をテーマに研究を進めてきた。理論研究だけでなく、各地における復興マニュアルの策定、事前復興ビジョンの構築などを支援してきた。その中から、被災者が復興主体になる「まちの復興」に備えるには、住民が行政や専門家と協働して問題を解決する力を身につけておくことが重要であり、そのために「復興まちづくり訓練」が有効であることを提起するにいたった。さらに訓練を行なうことよって、災害前、すなわち日常のまちづくり・地域づくりがパワーアップしていく効果も確認できた。この冊子が、全国各地で防災や安全な地域づくりを願う方々に役立てられることを願っている。
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