2011 年に発生した東日本大震災から 10 年が経過 したが、震災以前から人口減少、少子高齢化、過疎化が進んでいた東北沿岸域においては、復興の遅れが、被災地の産業停滞や地域コミュニティ崩壊、人口流出等、平時から地域が抱え、災害によって顕在化された様々な課題を加速させることとなった。西日本沿岸域においても、人口減少、少子高齢化、過疎化といった「社会リスク」に加え、近い将来における南海トラフの巨大地震の発生といった 「自然災害リスク」を抱える地域が点在している。 そのような持続の危ぶまれる地域では、まちのリスク(「社会リスク」と「自然災害リスク」の両方)を受け止め、復興を含めたまちの将来像を共有するといった(地域版総合計画)としての事前復興の取り組みが必要であると考えられる。
著者らは、この取り組み自体を「事前復興まちづくり計画」と呼び、「地域で幸せに住み続け、 次世代に地域を継承する」を目的としている。また計画の立案プロセスとして、①住民からの発意・組織の設置、②地域の骨格、魅力や課題等の現状整理、③地域継承・幸福の抽出と共有化(未成年も尊重)、④災害と地域継承の歴史の整理、⑤地域継承・幸福に及ぼす次の災害の影響評価、⑥地域継承・幸福のための将来像・施策・土地利用の立案を措定している。
本稿では、徳島県海部郡美波町における事前復興 まちづくりについて、著者ら徳島大学が、(1)2013 年 7 月に持続可能なまちづくりをテーマとして連携協定を締結した美波町と、(2)2012 年の組織発足から継続して事務局支援を行っている美波町由岐湾内地区の住民主体の取り組みについて報告する。
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